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横浜・氷川丸と日本郵船歴史博物館に子連れで行ってみた

ジブリ映画にも登場!港町・横浜のシンボル「氷川丸」と海運の歴史が学べる「日本郵船歴史博物館」

横浜の山下公園に係留されている豪華客船「日本郵船氷川丸」。昭和5年(1930年)に就航し、30年間にわたって活躍。往時は「海に浮かぶ最高のホテル」と称されました。実際に船内に入って、内部を見学することができます。

氷川丸と同時期の大型船は、ほとんどが太平洋戦争の際に軍に徴用され、沈没しました。そのため、現在も竣工当時の姿をとどめて海に浮かぶ氷川丸は、とてもとても貴重な存在。ジブリ映画『コクリコ坂から』では、主人公の海と俊が山下公園を歩くシーンの背景に、港に係留された氷川丸が登場します。

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山下公園。港町・横浜のシンボル、氷川丸が係留されている。

そんな氷川丸と併せて訪れたいのが、氷川丸から徒歩およそ15分の「日本郵船歴史博物館」。戦前から現在にかけての日本の海運の歴史が学べるミュージアムです。展示だけでなく、80年以上前に建てられた歴史ある建物も見どころのひとつ。氷川丸とセットで訪れると、より理解が深まります。

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日本郵船歴史博物館。氷川丸から徒歩15分。

今回、1歳の息子を連れて、親子3人で氷川丸と日本郵船歴史博物館を見学してきました。この記事では、見学の際のベビーカーのことやオムツ交換、船内・館内の様子など、赤ちゃんや小さなお子さんを連れて訪問する際のお役立ち情報や、それぞれの見どころを紹介します。

●この記事は2020年8月時点での情報です。

氷川丸の子連れ・赤ちゃん連れでの見学について

「日本郵船氷川丸」の内部は、客室、オープンデッキ、機関室、操舵室など、見学箇所がたくさんあり、全て回ると1時間はかかります。

ベビーカーは船内へ持ち込めません。乗船口のすぐ裏側に、ベビーカー置き場があります。船内は狭い通路や階段を通る箇所もあるため、手荷物は少なめにしておいたほうが良いです。乗船口のそばにコインロッカー(無料)がありますが、現在は新型コロナ対策で使用中止となっています。

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ベビーカー置き場。乗船口のすぐ裏手にある。

船内にはトイレやオムツ交換台があります。おしり拭きやオムツ用のゴミ箱も完備。

船内は階段が多く、特にブリッジ(操舵室などがあるエリア)や、機関室(エンジンルーム)では、狭くて急な階段を昇り降りするので、赤ちゃん連れの場合は抱っこひもが無いと厳しいです。

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トイレ内に設置されたオムツ交換台。

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見学ルートには階段が多い。

狭い階段など、手すりを触らざるを得ない箇所には、必ずと言っていいほど手の消毒用アルコールが設置されていて、感染対策が徹底されていました。

入館料は、大人300円、小中高生100円です。日本郵船歴史博物館とのセット券で購入すれば、大人は200円分お得です。

セット券は期限がないので、氷川丸と博物館を別の日に見学することも可能です。氷川丸の見学では、船内を1時間近く歩き回るので、小さな子供連れの場合は2日に分けての見学がオススメです。

氷川丸だけを見学する場合、公式サイトにある優待券を提示することで、大人料金から50円の割引が受けられます。

氷川丸の見どころについて

同時期に建造された大型船がすべて戦争で沈没したこともあり、氷川丸は戦前の日本の造船技術や、大型客船の内装を示す貴重な産業遺産として高く評価されています。2016年には重要文化財に指定されました。海に浮かぶ美術館であり、歴史の生き証人でもあるのです。

船内への出入りには、タラップを使用します。まるで、これから外国航路の船旅に出るような気分に。氷川丸は舵を切断してプロペラを外してあるため、自走はできませんが、港に固定されているわけではなく、ちゃんと海の上に浮いています。

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タラップで乗船する。まるでこれから船旅に出るような気分。

船内は写真撮影可能です。アール・デコ様式の優美な装飾が施された船内は、レトロ感満点。モノトーンを基調に、ジグザグ模様や流線形、幾何学模様をあしらったモダンな内装は氷川丸のデビュー当時、大変話題になったそうです。

船内には、まるでレオナルド・ディカプリオがタキシードを着て降りてきそうな階段があります。氷川丸のサイズはタイタニック号の約4分の1ですが、氷川丸の竣工は1930年で、タイタニック号(1912年竣工)と、ほぼ同年代。「タイタニックの中もこんな感じだったんだろうな〜」なんて思いを巡らせながら見学が楽しめます。

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アール・デコ調の装飾が美しい、船内の階段。

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船内の廊下

一等の食堂や社交室、客室など、ゴージャスな内装の部屋がいくつもあります。喜劇王・チャップリンが滞在したという一等特別室は、2間続きのスイートルームで、ステンドグラスの装飾が施されています。私は船や機械にそんなに関心があるほうではありませんが、船内の内装を見て回るだけでかなり楽しめました。

機関室には、竣工当時最新鋭だったエンジンが、現役時代そのままに残されています。このエンジンで氷川丸は、およそ11日間で太平洋を横断したそうです。

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機関室の内部。

機械オンチの私は、エンジンに関する説明を読んでもちんぷんかんぷんでしたが、機関室に足を踏み入れると、とにかくその迫力に圧倒されました。

戦時中の3回の触雷でも沈没せず、その生涯で太平洋を254回横断した、強運の船の心臓部分に入れるわけですから、実はものすごいパワースポットなのかも。

氷川丸とジブリ映画『コクリコ坂から』

氷川丸が客船としての役目を終え、横浜港に係留されたのは1961年。ジブリ映画『コクリコ坂から』では、主人公の海と俊が1963年の山下公園の海岸沿いを歩く夜のシーンの背景に、氷川丸が登場します。

この時期は、氷川丸の係留のほか、マリンタワーが建ったり、山下公園の再整備が完了したり、山下ふ頭が完成したりと、現在に繋がる横浜の風景が出来上がっていった頃でもあります。

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現在の船体の色は黒だが、映画の中では緑色で登場する。

コクリコ坂は、設定上は「1963年の横浜が舞台」ですが、当時の横浜をリアルに再現することにとらわれるのではなく、「記憶の中にある60年代の風景」「どこかで見たことがある風景」を描いているのだそうです。

実際の横浜は、もっと道路の舗装が進んだ都会だったようです。そもそも、物語に登場する坂道のモデルは実在する「谷戸坂」や「貝殻坂」を参考にしてはいるものの、横浜には映画のように、海に向かって下っていく坂道は実在しないのだとか。

映画に登場する氷川丸は、船体が現在のような黒ではなく、緑色。私は、「夜のシーンだから、灯りに照らされてグリーンっぽい色合いに見えるのかな?」と思っていたのですが、調べてみたところ、当時宿泊などに使われていた氷川丸の船体は、エメラルド・グリーンやブルーなどに塗り替えられていたそうです。

元の黒い船体に戻ったのは1980年代後半。ジブリは「当時の横浜を再現することにこだわらない・とらわれない」と言いつつ、なんだかんだで実在するランドマークについては超忠実です。

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夜の山下公園と氷川丸。

氷川丸のほかにも、ホテルニューグランド 、マリンタワーなど、今もその姿をとどめる横浜の建築物が映画の背景として登場しているので、ぜひ探してみてください。お馴染みのみなとみらいの観覧車やインターコンチ、ベイブリッジの姿が無くても、横浜の夜ってこんなに綺麗なんだ、って感激します。

ちなみに、映画のラストで登場する、小野寺船長が乗る外国航路の大型貨物船「航洋丸」。この航洋丸の煙突には、氷川丸と同じ二本の赤いラインが。航洋丸は架空の船ですが、日本郵船の船という設定です。小野寺船長と商船学校の同級生であったという海のお父さんも、日本郵船の船乗りだったのかもしれません。

日本郵船歴史博物館の子連れ・赤ちゃん連れでの見学について

氷川丸から徒歩15分、みなとみらい線馬車道駅から近い場所にある「日本郵船歴史博物館」。出入口に5段ほどのなだらかな階段があるものの、中に入ってしまえば、あとはベビーカーで見学が可能です。館内の多目的トイレには、オムツ交換台が設置されています。見学所要時間は40〜50分程度。

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博物館の出入口はなだらかな階段になっている。

入館の際、新型コロナ対策で、手の消毒、マスクの着用のほか、手袋の着用が必要です。入り口でポリ手袋を渡されます。見学中、大きな荷物は館内のロッカー(無料)に入れておきます。

展示内容は、船の模型や、かつて船内で使われていた道具などがメインです。うちの1歳の息子はさすがに退屈してぐずってしまいましたが、やはり「乗り物」に関する展示なので、幼稚園児〜小学生くらいの子であれば、結構楽しめる博物館だと思います。私たちが訪問した日も、小学生くらいの男の子がお父さんと一緒に見学に来ていました。

入館料は、大人400円、中・高生250円、小学生以下は無料です。氷川丸と両方見学するのであれば、セット券がお得です。セット券は期限がないので、別々の日に見学することも可能です。

博物館だけを見学する場合、公式サイトにある優待券を提示することで大人料金から100円、中高生料金から50円の割引が受けられます。

日本郵船歴史博物館の見どころについて

館内の常設展では、日本郵船の社史をとおして、明治維新から現在に至るまでの日本の海運の歴史を学ぶことができます。

館内は撮影禁止ですが、私が訪問した時は現代美術展の「ヨコハマトリエンナーレ」の期間中で、一部エリアのみ、撮影できました。

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館内は通常、撮影禁止。この日は「ヨコハマトリエンナーレ」のマリアンヌ・ファーミの作品の展示エリアのみ、撮影可能でした。

特に印象的な展示は、「昭和初期の豪華客船時代」「太平洋戦争中の軍による徴用」に関する展示です。

豪華客船時代については、当時の船内で使われていた食器やパンフレット、再現されたディナーなどから、氷川丸がシアトル航路にデビューした華やかな時代に思いをはせることができます。日本郵船の客船サービスは世界トップクラスで、特に食事の素晴らしさに定評があり、帝国ホテルと並び、日本の洋食の源流と評されています。

戦時中に関する展示では、軍に徴用され、沈没していった商船(貨客船や貨物船)のことが紹介されています。

第二次世界大戦では、戦争に関する様々な輸送を担うために、多くの商船が船員とともに徴用されました。商船は輸送路を断とうとする攻撃の標的となり、次々と沈められていき、任務についた船員の43%が亡くなりました。

氷川丸の姉妹にあたる遠洋航路の豪華客船も、そのほとんどが多くの人命とともに海に消えました。終戦時に残っていた日本郵船の1万トン以上の船は「氷川丸」ただ1隻という壊滅的な状態だったそうです。

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多くの商船が沈没させられたなか、氷川丸だけが生き残った。

その他の見どころとしては、日本の海運の歴史を担ってきた船たちの、全長2〜3メートルはあろうかという精巧で美しい模型が数多く展示されています。館内のミュージアムショップで販売されている模型は、1メートルに満たないサイズでおよそ20万円。博物館に展示されている模型はいったい時価いくらなんでしょうか・・・

数多くある船の模型の中でも、氷川丸の48分の1の模型(全長3メートル越え!)は、竣工時の設計図面に基づいて精巧に作られたとても貴重な作品です。戦時中に対日資産凍結でカナダ政府に没収されたものの、数奇な運命を巡り、日本郵船に返還されたのだとか。

館内では、館長代理による常設展解説も行われています。毎月第1・第3土曜日と第2・第4木曜日の14時〜15時で、予約制(定員5名)、料金は入館料のみです。

わが家は息子の昼寝時間の都合上、開始時間までに到着できるか怪しく、予約はせずに伺ったところ、ちょうど解説が始まったところだったので、飛び入りで参加させていただくことができました。

海運のプロから直接学べるとても贅沢な機会なので、日程が合えばぜひ参加してみてください。

博物館の建物は、戦前に日本郵船の横浜支店として建てられました。ギリシャ風の柱が並ぶ外観が特徴です。

このエリアには戦災を免れた古い建物が数多く残されていますが、このようなギリシャやローマ風の古典的なデザインの外観は珍しいと思います。内部は天井などに、アール・デコの優美な装飾がみられます。

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ギリシャ・コリント式の列柱。

日本郵船歴史博物館を見ると小説や映画のストーリーの背景がよく分かる!

太平洋戦争で軍に徴用され、台湾沖で沈没した豪華客船をテーマにした浅田次郎の小説『シェエラザード』。物語に登場する架空の豪華客船「弥勒丸」のモデルは、日本郵船の「阿波丸」で、氷川丸の妹分にあたる船です。

小説の中では、船内の豪華な装飾のことや、船の性能のことなどが詳しく語られています。氷川丸や日本郵船歴史博物館を見学してからシェエラザードを読んでみると、ストーリーの見方が変わってきます。

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浅田次郎先生も氷川丸を見学して小説を書いたはず!(写真は氷川丸の操舵室。)

ジブリの『コクリコ坂から』の主人公・海の父親も、戦争による船の事故で亡くなっています。朝鮮戦争で、国連軍に協力して物資や人員を運ぶLST(揚陸艦)の船長を務めていた海の父は、船が機雷に当たって沈没し、命を落としました。

朝鮮戦争が起きたのは、太平洋戦争から5年後ですが、この時代の日本はまだアメリカの占領下にあり、公式文書として公開されていないものの、日本人船員や港湾労働者、技術職がかなり朝鮮半島に行っていたのだそうです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。横浜のベイエリアには、このほかにも「横浜開港資料館」や「横浜都市発展記念館」、「神奈川県立歴史博物館」など、港町・横浜に関する展示を扱う博物館が数多くあります。子連れで横浜へお出かけの際に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

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神奈川県立歴史博物館。かつては銀行として使用されていた建物。

氷川丸のすぐそばにある歴史的なホテル「ホテルニューグランド 」は、子連れで横浜を観光する際の宿泊先としてオススメです。別の記事で詳しく紹介していますので、あわせてごらんください。

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【参考文献】

『THE ART OF From Up On Poppy Hill コクリコ坂から』(スタジオジブリ責任編集/徳間書店)

『コクリコ坂から ビジュアルガイド〜横浜恋物語〜」(ニュータイプ 編/角川書店)

『コクリコ坂から』(スタジオジブリ、文春文庫/文藝春秋)

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